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宇宙で太陽光発電 |
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宇宙空間に打ち上げられた人工衛星が、超巨大な電池パネルを広げ、太陽光発電によって得られたエネルギーを電波で地上に伝送する。こんな構想の実現に向け、日本政府主導で粛々と研究開発が進められているのをご存じだろうか。「宇宙太陽光発電システム(SSPS)」と命名されたこの計画は、1968年に米国の研究者がその構想を科学誌に発表したのが始まり。これを受け米国では、NASAとエネルギー省が具体化に向けた検討を開始したが、予算的にかなり大規模なプロジェクトであったため、レーガン政権時代、財政難を理由に計画が頓挫した。一方日本では、エネルギー資源が乏しいという国内事情もあってか、早い段階からSSPSの研究が始められ、現在でも文部科学省を中心に宇宙航空研究開発機構(JAXA)、民間の研究機関や企業、大学などの共同プロジェクトとして遂行されている。 SSPSの仕組み JAXAなどが取り組むSSPSの仕組みは、まず地上3万6千qの静止軌道上の人工衛星に、2q四方の超巨大な太陽光パネルを設置する。そこで発電した電気は、電子レンジや携帯電話などに使われるマイクロ波に変換。送信アンテナから地上の直径3qほどの受信アンテナに送る。そしてそのマイクロ波を、地上で再び電気に戻して利用する、といったもの。SSPSが地上での太陽光発電と最も異なるのは、自然条件に大きく左右されないことである。われわれの暮らす地上が夜であろうと、悪天候だろうと、静止軌道上には常に太陽光が降り注ぐ。また真空の宇宙空間では、大気の吸収などで太陽光が減衰しないので、強力なエネルギーを無駄なく集めることができる。このため地上での太陽光発電と比べ、単位面積当りの年間利用可能エネルギー量は10倍ほどにもなるという。またエネルギー源が太陽なので、石油や天然ガスなどと違い、枯渇するといった心配もない。JAXAなどは2040年代に、出力百万`h級(原子力発電所1基分相当)のシステムの実現を目指すとしている。 マイクロ波の伝送 もちろん、克服すべき課題は多い。まず伝送技術だ。宇宙から地上のアンテナにマイクロ波を正確に届けるには、ゴルフで4q先からホールインワンを狙うくらいの精度が必要とされる。送信アンテナの角度が0・01度変わるだけで、地上では1qもズレが生じるからだ。産官学の共同研究チームは昨年12月から京都大学で、電気をマイクロ波に換え無線で送る、初の地上送電実験を始めた。今回の実験では、電波の進む方向を細かく制御できるかどうかや、電波から電気に無駄なく変換できるかどうかなどを調べる。SSPSが実現するのは40年代以降といわれているが、無線送電は離島や山中への電力供給手法などとしても期待されており、実用化を急ぐ。また走行中の電気自動車に電気を供給することも可能になるので、次世代のインフラ基盤技術としての期待も大きい。三菱重工業は今年の3月12日、10キロワットの電力をマイクロ波に変換し、5百m先へ届けることに成功したと発表。同社はこの技術を幅広く産業用に応用したいとしており、例えば洋上風力で得た電気を陸上に無線送電したり、災害時に停電して孤立した集落に電気を無線で送ったりということも想定しているようだ。無線送電のカギとなるのは制御技術だが、三菱重工は狙った場所に電気を送る高い精度にも目途をつけたとし、5年後の実用化を目指すとしている。 採算性の問題 だが、SSPS実現のための究極的課題は、やはり経済性だ。ロケットを使って宇宙に運ぶ機器類をより小さく、軽くする必要がある。現状のままではどれもが重すぎて、打ち上げにかかるコストだけで莫大な金額になってしまう。例えば2q四方の太陽光パネルを宇宙に運ぶコストだけでも、1〜2兆円になると見積もられている。地上で競争力のある電気料金に比べ、とても採算が合わない。このため高効率で軽量な電池パネルの開発を始め、電波を地上に送るアンテナの重さを百分の一に軽量化、厚さも十分の一程度にしたい考えだ。また電力を電波に変換する半導体の効率も現在の70%から80%に高めたいとしている。経済産業省は、こうした技術開発に取り組む企業や研究機関を、昨年8月に公募で選定。翌月から3年間、助成金で支援するとした。今後の技術革新で、今よりずっと重い物資を輸送できる新型ロケットが現れ、太陽光パネルがぐんと軽くなる可能性はある。それが現実となった場合、JAXAなどの試算によれば、原発1基分の発電量にあたるSSPSを宇宙に建設するコストは、総額で約1兆2千億円だという。一見割高だが、天候などに左右されない安定稼働によって運転コストが低く抑えられ、発電コストは1キロワット時あたり9円。石炭や天然ガスを使う火力発電よりやや低い水準で、風力や(地上での)太陽光といった自然エネルギーよりは大分安くなるとみている。経産省は30年代後半に宇宙空間での送電実験にこぎ着け、40年代以降での実用化を目指している。実現に向けた具体的な工程表は今年度中にもまとめる方針だ。 SF小説の如く 現在のところ、日本のSSPSに関する技術レベルは、世界のトップクラスに位置している。海外では欧米がSSPSの要素技術の実証に取り組んでいるが、宇宙での利用を想定した実験を実施しているのは、わが国だけ。とはいえ、世界ではむしろここにきて、SSPSに再評価の動きが広がっている。米国では2011年、NASAが次世代技術コンセプトの研究テーマの一つにSSPSを選び、今後の実証試験も視野に入れている。最も熱心なのが中国。先進国の研究成果を重点的に調べており、今後は独自に技術開発を加速し、50年までに商用化を目指すという。JAXAは将来、出力百万キロワット級のSSPSを20〜30基設置して、日本の消費電力の20〜30%を賄うことを狙っている。基数を更に増やすことは可能だが、エネルギーを一つの発電方式に過度に依存するとリスクが高まるので、目標はあくまでも、消費電力の20〜30%までに抑えたいとしている。まるでSF小説のようだが、原発の再稼働が遅れ、次世代のエネルギー構造をどうするべきかが真剣に議論されている今、宇宙太陽光発電には追い風が吹いている。日本政府は中長期で、新技術による他国に依存しないエネルギーの育成を図りたいからだ。 (文責 編集部・満岡) |
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〈特別寄稿文〉 |
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「未知との遭遇」を求めて(その二) |
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昭和41年卒・普通科A組 満岡貞太郎 |
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前回のあらすじ NASAなどの研究グループが米カリフォルニア州モノ湖で採取した細菌に、猛毒のヒ素を加えて培養すると、このヒ素を食べて増え続けることを発見。生命の遺伝情報が刻まれているDNAを調べると、リンがヒ素に置き換わっていたという。リンはDNAの骨格を作る大事なもの。地球上すべての生物が持つとされる生命の必須元素は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リンの6つ。生物学の教科書に書かれた生命の大原則だった。研究結果はこの常識を打ち破る成果といえる。ヒ素を食べて生きる細菌の発見は、水の存在を突き止めなければならないなどとしてきた従来の地球外生命探査の前提条件に、再考を促すことになった。3、地球外生命に期待膨らむ地球以外の場所に生物がすむ状況証拠は近年積み重なっており、発見への期待は高まり続けている。ヒ素を食べて生きるくらい環境への適応力に優れた生物が存在するのであれば、地球外の天体の様々な場所で生命が存在する条件が緩くなる。一方、宇宙に目を広げれば「生命のゆりかご」になる環境を持つところが結構あることがわかってきた。ここ数年、太陽系の外に、地球の最大の特徴である「液体の水」が存在できるような惑星が相次いで見つかっている。米航空宇宙局(NASA)は昨年2月、ケプラー宇宙望遠鏡を使って太陽系以外で1235個の惑星とみられる天体を発見したと発表。ほとんどが地球より相当大きいが、うち68個は地球とほぼ同サイズ。太陽に相当する恒星からの距離が近すぎず遠すぎず、惑星表面に液体の水が存在できる範囲を「ハビタブルゾーン」と呼ぶが、この圏内に位置する可能性があるのは54個とした。大きさが地球とほぼ同じで水も存在しうる惑星候補は5個だという。それまでに見つかっていた太陽系外の惑星は、木星のように超大型のガス惑星が大半で、全部で500個ほどだった。大きさが地球の数倍程度で「スーパーアース」と呼ばれる惑星は巨大なガス惑星とは違い、地球と同じように岩石や氷でできている可能性が高く、恒星との距離によっては海に覆われているかも知れない。同年12月にはNASAが、地球によく似た惑星「ケプラー22b」を確認したと発表。ケプラー宇宙望遠鏡の観測によって、太陽系外の惑星である可能性が高いとされたものは、地上の望遠鏡や赤外線天文衛星「スピッツァー」の観測によって慎重に確認作業が行われる。ケプラー22bは、2月に54個見つかったハビタブルゾーンの惑星候補の中で確認が完了した最初のものだ。白鳥座と隣の琴座の方向に地球から600光年の距離にあるこの惑星。大きさ(半径)は地球の2.4倍で、温度は22度と推定される。恒星との距離は地球・太陽間よりやや短く、公転周期は290日。この恒星の出す光が太陽よりやや弱いため、惑星がほどよい温度になるような位置関係にあるとみられる。実はハビタブルゾーンにあって地球とほぼ同サイズと思われる惑星はこれまでにも2つ見つかっている。地球から36光年の惑星「HD85512b」と20光年離れた「グリーゼ581d」だ。いずれも中心の恒星は太陽より暗く小さい星で、惑星の公転周期も数十日と短く、ハビタブルゾーンのギリギリ端に位置する。太陽系でいうと金星や火星のような距離関係だ。これに対して、ケプラー22bは「地球にそっくり」と話題になった。すべての水が蒸発することも凍りつくこともない。液体の水が存在できる環境という。ただし、惑星の表面が岩石かどうかや、ガスや液体の構成比などの確認にはもう少し時間が必要だ。現在見つかっているハビタブルゾーンにある惑星候補はケプラー22bを含めて48個。2月に公表された54個から数の上では減っているが、「ハビタブルゾーン」の定義を厳密にしたからだという。残り47個についての確認作業が進めば、地球外生命探しの対象が一気に増える可能性もある。しかしもどかしいのは、こうした遠い天体は直接探査機を送って現地を調べようがなく、あくまでも「可能性」のレベルにとどまってしまうことだ。4、太陽系内の探査に注目ではなぜ、これほど地球から離れた惑星で生命を探すのか。太陽系内では60年代から惑星探査が進み、水が存在した可能性がある火星や木星の衛星「エウロパ」、土星の衛星「タイタン」などに生命の可能性が指摘されていた。だが既知の生物から考えると、どの星も生命存在には厳しい環境。このため「太陽系内には生命が存在しない」と考えられてきた。しかしNASAなどの研究グループが、常識を覆す新しい細菌を見つけたことで、現在考えられている以上に厳しい環境でも生命は存在できる可能性が高まってきたのだ。NASAは昨年11月「エウロパの表面を覆う氷の下に、米国の五大湖に匹敵するような巨大な湖がある可能性を示す新たな証拠を見つけた」と発表。無人探査機ガリレオを使った観測で分かったという。また今回の研究で生命が存在する可能性も高まったとしている。氷と水が混じり合えば、水の中にも栄養分やエネルギーが運ばれるとみられるからだ。だが何といっても期待が高まるのは、今後も探査計画が数多く予定され、将来は有人探査も想定される火星だ。米国は過去に十数回も火星に無人探査機を飛ばして、かなりの観測データを持っている。場所によっては、表面を少し掘れば大量の氷が存在するらしいことも分かってきた。現在も探査機ローバーが移動しながら探査中だ。また昨年11月には、過去最大の探査機「キュリオシティ」の打ち上げに成功。今年8月には火星に到着して、生命活動に適した環境があるか詳しく調べるという。火星での生命存在の状況証拠も増え続けている。遡る96年にはNASAが火星由来とみられる隕石に生命の痕跡を発見したと発表。隕石に微生物に似た形が刻まれ、付近から有機物や磁鉄鉱というバクテリアが作る成分も確認された。そこで浮上してきた学説が、生命体は宇宙からやって来たとする「パンスペルミア説」。専門家の間では長年、異端視されてきた考え方だが、NASAが火星から飛来した隕石に生命の痕跡を見つけたと発表したことで俄然、脚光を浴び始めた。更に昨年8月には、NASAゴダード宇宙センターなどのチームが、南極などで見つかった隕石から、生物のDNAを構成する分子を発見したと発表。パンスペルミア説を後押しする結果となった。チームは12個の隕石を分析。アデニンやグアニンのほか、これらと構造のよく似た炭素や窒素から構成される分子を複数発見。隕石が地球に落ちた後に、地球上の生物などから混入したとは考えにくいという。今後の探査計画からは目が離せない。 |
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「未知との遭遇」を求めて(その一) |
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昭和41年卒・普通科A組 満岡貞太郎 |
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1、宇宙生物学上の発見昨年12月1日付けの日本経済新聞・朝刊38面にこんな記事が載った。地球外生命探索に影響米航空宇宙局(NASA)は29日、「地球外生命体の証拠の探索に影響するであろう宇宙生物学上の発見」について、米東部時間の12月2日午後2時(日本時間同3日午前4時)に記者会見することを明らかにした。ワシントンのNASA本部で会見すると同時に、その様子をインターネットで中継するという。NASAがプレスリリースした英文をそのまま直訳したものか、「
」内の文章が何とも不自然でぎこちない。ほかの主要各紙にも目を通したが、どれも似たようなもの。そこで原因はNASAの原文自体にあると考え、その英文を入手。辞書片手に翻訳を試みたものの、どうにも訳しづらい。持って回ったような、また含むところがありそうな表現で、実に難解な文言であった。こうしたことから様々な憶測を呼んだ。米CBSや、CNNのニュースブログは「地球外生命体、発見か!」と報じ、国内のスポーツ紙・夕刊紙やテレビのワイドショーでも取り上げられた。「ウィキリークス(内部告発専用サイト)に暴露されそうになったため、自ら発表することにしたのではないか」との穿った見方まで出る始末。インターネットのニコニコ動画は「土星の衛生・タイタンで生命体が発見されたのではないかという推測が最も有力」と宣伝し、日本時間午前4時からのNASA本部の会見を日本語に同時通訳して配信。未明にもかかわらず、9万人以上が視聴したという。当日、私も眠たい目をこすりつつパソコンの前に座り、モニターの画面に見入った。記者会見には5人の研究者が現れた。NASAなどの研究グループが共同研究したもので、その成果は米科学誌サイエンスにも掲載されるという。この研究を率いたNASAのフェリッサ・ウルフ・サイモン博士が、「常識を覆す異常な生物を見つけた。それは、生命維持に不可欠とされた元素が無くても生存できる細菌だった」と目を輝かせ、「既知の生物とは全く異質な生命体であることを示すものだ」と強調。「こんなことだと宇宙には、我々が想像もしないような生命体が存在するのかもしれない。すごいことだ」と期待を込めた。研究グループが、細菌を見つけたのは米カリフォルニア州のモノ湖。モノ湖には外へ流れ出す川がない。塩分濃度が海より3倍高いほか、アルカリ性が強く、猛毒のヒ素を大量に含む。この湖で見つかり「GFAJ│1」と名付けた細菌は、塩分を好むものの地球上でよく見られる「プロテオバクテリア」という細菌の一種。大きさは0・001〜0・002o。この細菌にリンの代わりに猛毒のヒ素を加えて培養したところ、このヒ素を食べて増え続けることを発見した。生命の遺伝情報が刻まれているDNA(デオキシリボ核酸)を調べると、リンがヒ素に置き換わっていたという。リンはDNAの骨格を作る大事なもの。地球上の生物が必ず持っているはずのリンがヒ素に置き換わっても生き続け、増えるというのは、正にこれまでの常識を覆すことだという。2、どこがすごいのか「宇宙人の捕獲じゃなかったの?」「地球で見つかった細菌っていうことか」。地球外生命体の発見かの事前報道に期待し、午前4時から中継されたNASAの会見を見ていた人たちは「ヒ素を食べる細菌の新発見」との内容に肩すかしを食らった。地球外生命の発見でないことが判明すると、「がっかり」「すごい発見だけど・・・・・・」「宇宙人が出てくるのを期待していたのに」と落胆の書き込みが相次いだ。国立天文台の渡辺潤一教授は報道各社の取材に応え「科学的には本当に面白い話なんだけど、成果を大きく周知したいNASAの思わせぶりな作戦に、メディアもみんなもうまいことやられちゃったね」と語っていたのが象徴的であった。この発見のどこがすごいのか。微生物から人間に至るまで、地球上のすべての生物が持つとされる生命の必須元素は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リンの6つ。これは生物学の教科書に書かれた生命の大原則だった。ノーベル賞に輝いたジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックのDNAの二重の螺旋構造の発見・解明などで、1953年に証明されたものである。今回のNASAなどの研究は、この常識を打ち破る成果といえる。これまで、永久凍土や深海の熱水の中など「極限環境」で生きる微生物は、複数見つかっている。だが、体を作る材料まで置き換えてはいなかった。NASAなどの研究グループによるヒ素を食べて生きる細菌の発見は、水の存在を突き止めなければならないなどとしてきた従来の地球外生命探査の前提条件に、再考を促すものである。 |
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日本の宇宙開発(その一) |
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1 新型ロケットとHTVの開発に成功9月11日午前2時1分、日本初の無人宇宙船「HTV」を載せた国内最大の新型ロケット「H2B」が、種子島宇宙センターから打ち上げられた。この模様は宇宙航空研究開発機構「JAXA(ジャクサ)」によって、同日の午前1時30分からインターネットでライブ中継された。H2Bは2本の主エンジンと4本の固体補助ロケットに点火された後、まばゆいオレンジ色の炎と真っ白な燃焼ガスの噴煙を漆黒の夜空に染めながらぐんぐんと上昇、夜明けと見まがうような輝きを残し、地球をあとにした。H2Bロケットはその後、固体ロケットブースタ、フェアリング(ロケットの先端にあるHTVの格納部)及び第1段ロケットの分離に成功。第1段ロケットは、打ち上げ約6分後にメインエンジンの燃焼を停止、第2段ロケットと分離した。分離後、第2段ロケットのメインエンジンが燃焼を開始し、所定の軌道に向かって高度を上げた。その9分後、今度は第2段ロケットが燃焼を停止して、ついに宇宙船HTVがロケットから切り離された。この分離は打ち上げから15分10秒後であった。HTVは国際宇宙ステーションへ向かう軌道に入り、打ち上げは成功した。今後は切り離された無人宇宙船HTVが、9月18日に予定通り宇宙ステーションにドッキングできるかに焦点が移った。HTVは全長10m、直径4.4mの円筒形で、ほぼ大型バスの大きさに匹敵。最大6tの物資を運べる。全長の4分の1を人工頭脳やエンジンが占める。今回は宇宙飛行士の食料品や日用品、日米の実験装置など計約4.5tを運んでいる。HTVはその後も地球周回軌道を順調に飛行し、17日午後10時59分に宇宙ステーションの下方5kmの接近開始点に到達。その後も徐々に高度を上げてステーションに近づき、18日午前1時38分にはその下方500mの位置に到着した。ここからは毎分1〜10mの接近速度でゆっくり、ゆっくりと慎重にステーションへ接近する。同日の午前4時27分、HTVはステーションの約10m下方にある捕獲ポイントに到着、秒速7.7kmで高速移動するステーションとぴたり同一の速度、つまり相対速度ゼロ(相対的静止)を保持しつつ並走(ランデブ飛行)を開始。程なく宇宙船のエンジンが停止され、ステーションから宇宙飛行士の操作するロボットアームがそろりのびて、宇宙船をしっかりと把持、そのままそっとステーション下部の所定のハッチに取り付けた。ドッキングはものの見事に成功した。ドッキング成功の歴史的瞬間も、ロケット打ち上げの時と同様にJAXAネットのライブ中継で目にすることができた。2 開発成功の意義無人宇宙船HTVを日本が開発した意義は大きい。宇宙開発で国際協調が進むなか、日本が資金面だけでなく技術力でも貢献できることを示した。日米欧ロなど15カ国が参加する宇宙ステーション計画で、日本が宇宙船を運航するのは初めて。退役する米スペースシャトルに代わって日本が物資輸送の中核を担い、宇宙開発での地位向上を狙う。物資や飛行士の輸送を担ってきた米スペースシャトルは老朽化のため、2010年に退役する予定で、新たな輸送船の確保が課題となっていた。宇宙ステーションに物資を運搬する手段としては、ロシアのプログレスと欧州のATVがある。しかしプログレスとATVは、共通結合気孔(1.2m×1.2mの正方形)より小さなドッキング装置(直径80cm)を用いるため、国際標準ラックはドッキング装置のハッチを通過できず、大型機材の輸送は不可能である。宇宙機構は、シャトルと同じ1.2m四方のドッキングハッチ(開口部)を確保し、大型機材を運べるよう、新しいドッキング方法を開発したのだ。またHTVは衝突防止に気配りした設計で、次世代の安全技術を備えたものだといえる。こうしたことから、HTVが物資輸送の主力機として一躍脚光を浴びている。HTVは11月初めまで宇宙ステーションに係留する予定。その後、廃棄物などを積み込んで宇宙ステーションを離れ、大気圏に再突入し燃え尽きる。無人宇宙船HTVは宇宙機構が開発方針を決め、国内約100の有力企業が680億円ほどをかけて開発、製造。HTVは使い捨てで、毎年1機ずつ2015年度までに計7機を打ち上げる計画だ。「日の丸技術」の集大成ともいえるHTVの成功は、独自に日本飛行士を宇宙に送り込む有人宇宙開発に一歩踏み出す格好にもなった。無人宇宙船HTVを宇宙へ送り出した大型ロケットH2Bの成功も大きい。ロケットはHTVが予定通りに宇宙ステーションへ向かえるかどうかを左右する。H2Bロケットは宇宙機構と三菱重工業が共同開発した。宇宙機構は当面、宇宙船HTVの打ち上げ専用機として運用するが、人工衛星の打ち上げ受注を含め、日本の宇宙産業拡大につなげていくことを想定している。ロケット打ち上げの成功率が90%以上の国は、日本も含めて5つしかない。今回を含め、日本の打ち上げは10回連続で成功している。国産主力ロケットの打ち上げ失敗は、過去に3度ある。1998年2月の「H2」5号機、99年11月の「H2」8号機及び03年11月の「H2A」6号機の失敗である。H2B開発前の主力ロケットであったH2Aは、更にその前身の「H2」が98、99年と連年で失敗したのを教訓にエンジンなどを改良し、01年8月に初打ち上げ。現在まで15回の打ち上げで失敗したのは03年の1回のみである。H2Aは宇宙機構が開発、人工衛星を載せて打ち上げるビジネスはその後三菱重工に移管されたが、打ち上げ費用が1回100億円超と欧米よりまだ2〜3割高い水準にあった。既存の主力ロケット「H2A」よりも推進力を1.4倍に増したH2Bは、複数の実用衛星を同時に打ち上げる能力をもち、国産ロケットの課題であるコスト低減への期待は大きい。H2Bは全長56m、直径が5.2m。H2Aの全長53m、直径4mに比べて一回り大きい。H2Aでは重くて搭載できなかった最大16・5tの宇宙船HTVを打ち上げられる。宇宙ステーションよりも遠くの宇宙空間へ運ぶ人工衛星については、H2Aの最大積載量6tから同8tにまで増える。宇宙機構と三菱重工で共同開発されたH2Bも、いずれ三菱重工に事業が移管される予定になっている。日本はこれでH2Aと併せ能力の違う2種類の大型ロケットを手中にした。商業・科学衛星や宇宙ステーションへの物資補給で多様化する宇宙への輸送需要に応じ、大型ロケットを使い分けられる体制が整った。この利点を生かし、欧米に水をあけられた打ち上げビジネスの一角に食い込めるか。日本の宇宙産業の競争力確保へ、これからが正念場となる。(次号に続く)(タイトル写真出典:JAXAホームページ) |
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〈特別寄稿文〉日本の宇宙開発(その二) |
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昭和41年卒・普通科A組 満岡貞太郎 |
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3 日本の宇宙産業を展望自民党政府が昨年6月にまとめた宇宙開発利用の中期戦略「宇宙基本計画」では、09〜13年度で過去5年の2倍となる34基の人工衛星打ち上げ計画を盛り込んだ。ロケット需要を増やして宇宙産業のすそ野を広げようとの思惑がある。世界の商業衛星打ち上げ需要は年間20〜25基で推移する見通しだ。欧州アリアンスペース社や米シーローンチ社(ボーイング社が出資)、ロシア系企業等が受注合戦を繰り広げ、競争は厳しい。特にアリアンスペース社は一度に2基の衛星を打ち上げるアリアン5を武器に、向う3年分の受注残を抱えるといわれ、突出した存在だ。H2Bロケットの打ち上げ能力は、このアリアン5に接近。従来の主力ロケットH2Aでは見送ってきた大型衛星もビジネス対象となった。開発した三菱重工業では、H2Bで複数の中小型衛星をまとめ打ちすれば、1基当りのコストも削減でき非常に強力な武器になるとみている。足元では日本の宇宙開発関連メーカーが、人工衛星などの主要部品を米欧から相次ぎ受注している。IHIが米無人宇宙船の主エンジンを、富士電機は独衛星メーカーに電力制御用パワー半導体の宇宙仕様をそれぞれ納入。三菱電機がHTVで実用化した無人誘導接近システムをNASAに納入決定。三菱重工は大型ロケット向けエンジンを米国向けに売り込む。民間企業がこの産業を事業として拡大させるには、年間2兆円市場とされる海外市場の攻略が不可欠である。無人宇宙船HTVなど日本の宇宙開発が安定した実績を残し始めたことが追い風となり、日本の関連メーカーでは輸出拡大に期待を高めている。2008年に成立した「宇宙基本法」でも、宇宙開発関連の産業振興が謳われている。政府が宇宙産業の後押しをするのは、この産業が膨大な波及効果を産み出すと考えられるからだ。ロケット、人工衛星、宇宙船などの部品点数は自動車に比べても格段に数が多い。何百万点ともいわれる部品を高度に組み合わせたテクノロジーの集積なのだ。高い信頼性・安全性が求められる宇宙関連機器の開発を通して、設計・製造技術、品質保証技術、更にはコンピュータ・シュミレーションなどのソフトウェア開発のノウハウが飛躍的に高まることはまず間違いない。自動車や電機などと同様に日本を代表する産業に成長する可能性が極めて高いともいわれている。4 これからの宇宙開発無人宇宙船HTVによる宇宙ステーションへのドッキング後は、物資を宇宙から地球へ安全に戻す「帰還機」の開発が課題となる。HTVはステーションに物資を届けた後は、宇宙で廃棄する一方通行型。日本のHTVだけでなく、ロシアのプログレスや欧州のATVなど、無人船には地球に戻る性能がない。日本の実験棟・きぼうへ実験材を届けても、その成果を地球に持ち帰るには有人船の米・スペースシャトルや露・ソユーズに頼るしかない。シャトルはNASAが開発した世界初の再使用型宇宙船。最大7人のクルーと機材・物資を搭載したシャトルは、ロケットのように打ち上げられ、飛行機のように着陸できる。現在はディスカバリー、アトランティス、エンデバーの3機が運航しているが、そのすべてが今年中に退役となる。シャトルは、1972年に終了したアポロ計画の後を受け、低コストで宇宙に行くための宇宙船として81年に初飛行。だが再利用することで、逆に莫大なメンテナンス費用がかかってしまった。1回の打上費用の実績は約5億ドル(450億円程度)で、開発当初の3千万ドル(約27億円)という見積りを16倍強も上回る。更にこれまで2度大きな事故(86年にチャレンジャーが打上直後に空中分解、03年にはコロンビアが着陸直後に空中分解)が起こるなど安全面での実績に不安もあり、退役が決まった。現在米国が開発中のオリオンはこうした理由から、一世代前のアポロと同じ使い捨て式に戻すとか(因みにロシアのソユーズも使い捨て型)。ただオリオンのお披露目は5年後の15年。シャトル引退後から4年超のタイムラグが生ずる。この間どうやって米国は、ステーションへ人員や物資を運ぶのか。人員はロシアのソユーズで往き来し、日本と欧州の無人船が物資輸送を担うことになるだろう。もはや宇宙開発は一、二の大国だけを頼っていることに無理があり、国際協調しながら推し進める時代に移行したのだ。シャトルの退役は、まさに宇宙開発の新時代を予言している。日本の実験棟・きぼうと地上の往復回数も大幅に減らざるをえない。きぼうの実験材だけでも地球に持ち帰る「帰還機」の開発を求める声が日増しに強まってきた。今年2月にオバマ米政権は、ブッシュ前政権時代からNASAが進めてきた「月探査計画」を、予算不足のため中止すると発表。一方日本でも昨年6月にまとめた宇宙基本計画に、20年を目途にロボットで月面を探査する独自計画を盛り込んでいた。飛行士を送り込む有人探査は膨大な費用がかかるとされ、米国などの国際計画への参加を探っていた。米国が断念すれば日本の有人探査も難しくなる。そんな中での米国の中止宣言であった。昨年9月、日本には政権交代が起った。民主党政府が宇宙開発にどんな判断を示すのか、その動向が注目された今年3月、首相が本部長をつとめる「宇宙開発戦略本部」は懇談会を開き、「飛行士が乗れるロケットや地球帰還機をすべて独自に開発するには1兆円を大きく超える予算が必要で、現実的ではない」と結論づけた。米国の金融危機を契機としたグローバル不況のさなか、莫大な支出を伴う宇宙開発は確かに非現実的だ。向う数年の足踏みは止むを得えない。しかし技術立国を標榜する日本に、「宇宙開発」をこのまま放擲することだけはして欲しくない。そこには、ハイテクノロジーの集積が眠っているからだ。だが遡る本年1月、鳩山内閣は宇宙産業の国際競争力を強化すべく、民間からの新規参入を促す「新法案」を、同月に召集する通常国会に提出する方針を表明してもいた。現在、民間事業者は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と組まなければ宇宙開発事業には参入できない。そこで民間だけであっても、人工衛星の打ち上げ事業等への参入ができるようにしようというのが法案の趣旨である。国際法では、宇宙開発事業は「国家が安全を保証」する必要があるとしている。このために民間企業は、政府所管の独立行政法人・JAXAと共同で事業に取り組まざるをえなかった。新法案では、民間企業が衛星打ち上げなどに失敗した場合、政府が損害の一定額を補償する制度を創設。こうすることで、民間企業は国の認定を受けさえすれば、民間単独でも宇宙開発事業に携われるようになる。米国でも似たような動きが見られた。「月探査計画の中止宣言」の際、米政府は年内の退役が予定されるシャトルの代わりに、より安く、早期に、打ち上げが期待できる「民間のロケット開発支援」を強化すると表明したのだ。シャトルの後継機・オリオンの投入予定は15年であるから、その間隙を少しでも埋めるべく、民間の能力をフル活用しようとの目論見である。いよいよ宇宙開発の分野でも、国際協調を前提とした自由競争の時代が訪れようとしている。(タイトル写真出典:JAXAホームページ) |
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