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《右から》顕微鏡で幼虫を解剖する森くんと精子標本を観察する小林くん PCR反応を調製する吉田くん

 

 

 

 

2018年12月22日から24日に開催された日本学生科学賞(高校の部)中央最終審査会にて、森凛太郎(一貫5F)、小林達(特進2C)𠮷田昭音(一貫4D)の共同研究作品が「科学技術政策担当大臣賞」を受賞しました。日本学生科学賞は日本で最も伝統と権威のある中学生と高校生を対象とした科学自由研究コンテストで、「科学の甲子園」と呼ばれています。今年度は全国から約7万点の作品が出品され、地方大会最優秀賞作品154(高校の部)の内、中央予備審査を通過した20作品が中央最終審査会に出場し、上位5作品が大臣賞の受賞となります。昨年の読売新聞社賞(中学の部)に続き、2年連続の受賞となりました。さらに、2019年5月米国・アリゾナ州フェニックスで開催されるインテル国際学生科学技術フェア(Intel ISEF 2019)に、日本代表として出場することが決まりました。Intel ISEFは世界80以上の国や地域から約1800人のファイナリストが参加する世界最大の科学コンテストで、「科学のオリンピック」と呼ばれています。

研究テーマは「クロマルハナバチの倍数化」です。マルハナバチは受精卵から雌(働き蜂)が、未受精卵から雄蜂が産まれる性決定様式を持ちます。もし、野外で近親交配が起きると受精卵から染色体数が2倍の二倍体雄が産まれます。この二倍体雄は多くのハチで生殖能力がなく、個体群の縮小を引き起こす欠陥とされてきました。しかし、マルハナバチの二倍体雄は例外的に生殖能力を持つため、二倍体雄が交尾すると染色体数が3倍の三倍体雌雄が産まれます。このように染色体数が整数倍に増える現象を倍数化と言います。我々は、二倍体雄の例外的な生殖能力が、次世代の巣の創設を可能にする繁殖適応に貢献しているのではないかという仮説を立て、倍数体の生殖能力とその適応的意義について研究しました。

まず、同じ巣から産まれた女王蜂と雄蜂を近親交配させて、二倍体雄を産み出す巣を作出しました。マルハナバチの飼育は非常に厄介で、毎日新鮮な花粉を与えなければなりません。3人の部員は学校生活の合間をぬって、飼育が難しい近交系統を維持することに成功しました。また、二倍体雄の確認は雄蜂の形態を観察してもわかりません。そのため、染色体数を直接数える必要がありました。染色体は中学校の授業でも扱う細胞の中に見られる構造体ですが、実は観察するのが非常に難しいものです。森くんは、数ミリメートルの精巣と卵巣を幼虫から摘出し、細胞浮遊液の状態で保存する方法に挑戦しました。さらに細胞分裂を抑制する試薬を解剖前の幼虫に直接注射することで、染色体が観察できる時期の細胞を集める新しい方法に成功しました。倍数体の特定には、分子生物学的な手法も取り入れました。𠮷田くんは、雄蜂のDNAを抽出し、遺伝マーカーとなるDNA領域をPCR法で増幅させました。その後、DNAの長さの違いを可視化する電気泳動法で二倍体雄の特定に成功しました。この方法は犯罪捜査にも使われているものです。二倍体雄や三倍体雄の生殖能力は、精巣内の精子数を数えることで明らかにしました。小林くんは、スライドガラス上の精子標本を顕微鏡で観察しながら丁寧に数えました。その結果、三倍体雄が精子を生産している証拠を得ました。通常、動物の三倍体は生殖細胞(精子や卵)をつくる際に不都合が生じてしまい、子孫を残せません。しかし、マルハナバチの三倍体雄は生殖能力を備えているという新たな知見をもたらしました。小林くんの作製したスライドガラスの枚数は1000枚以上にもなりました。

研究は失敗の連続です。新たな実験に挑戦すれば、多くの壁にぶつかります。今回の研究も失敗と試行錯誤の繰り返しでした。時には、思うような結果が得られず辛い時期もありました。生物学では、対象となる生物の成長段階に合わせて実験しなければならないことがありますが、実験に適した時期が学校行事と重なり、そもそも実験ができなかったこともありました。しかし、このような難題に挑戦し続けられたのは、生命現象に対する知的好奇心があったからだと思います。真理を明らかにしたいという情熱が自然科学の本質です。

学校の学びは、すでに明らかになっている知識を覚え込むことが中心です。一方、科学研究は、未解明な現象に対して仮説と実験を繰り返すことで真理を明らかにする過程で、学校の学びとは逆のプロセスです。まずは誰かに教わる前に文献を調べてみる、オリジナルな実験方法をデザインしてみる、実験装置を自作してみるなどの主体性が必要で、受け身の姿勢にならないように指導しています。つまり、学校の勉強ができるからといって研究ができるとは限らないのです。生物部では、その両方のバランスがとれた社会が求める理系を育てていくことを目標としています。よって、研究テーマは未解明な現象を扱います。難易度が高いテーマであるほど、得られた時の感動も大きくなります。

現在、Intel ISEF 2019に向けた英文ポスターとスピーチの準備を進めています。私たちの研究が世界でどう評価されるのか、非常に楽しみです。これからも生物部の活動にご理解とご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

生物クラブ顧問 小島直樹